ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 条例 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

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 4月の勤務の初日、多くの地方自治体では、新たに採用された職員の「服務の宣誓」が行われます。これは、地方自治法第31条に基づき、各自治体の条例で定められています。

地方公務員法第31条(服務の宣誓)

 職員は、条例の定めるところにより。服務の宣誓をしなければならない。

 

 この規定に基づき、全地方公共団体は、「職員の服務の宣誓に関する条例」を定めており、その条例の規定に従って宣誓が行われます。

私の関係する団体の条例では、「新たに職員となったものは、任命権者又は任命権者の定める上級の公務員の立会のもとにおいて別記様式による宣誓書に署名押印してからでなければ、その職務を行つてはならない。」と定め、別記として次の様式が定められています。この規定内容、宣誓文等は、どこの地方公共団体も似たようなものです。

宣誓書

 私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、かつ、これを擁護することを固く誓います。

 私は、地方自治の本旨を体するとともに公務を民主的、かつ、能率的に運営すべき責務を深く自覚し、○民全体の奉仕者として誠実、かつ、公正に職務を執行することを固く誓います。

    年  月  日

氏名 印

 国家公務員について政令で定められている宣誓文は、地方よりやや短く、次のとおりです。

私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。」

 

日本国憲法遵守は一般職公務員の義務だが

 このように、一般職の公務員は、日本国憲法を遵守すること、公正であることを固く誓わされています。国家公務員については、不偏不党であることも誓ったはずです。

 昨今の財務省の問題、文部科学省の名古屋市教委への問い合わせ問題など、誓いを忘れてしまったとしか思えないふるまいが目につきます。

 政権自体が、野党から憲法に基づいて臨時国会召集の要求が出されても無視したり、自衛隊を海外の戦闘地域に派遣したりしている状況では、一般職公務員にばかり憲法遵守を求めても効果がないかもしれません。

 

 首相を始め、各大臣には、毎朝、執務前に宣誓してもらうこととすれば、あまり恥ずかしいことはできなくなるのではないかと思うのですが・・・。


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長期継続契約は、長期の契約であることが趣旨、目的ではなく、年度をまたぐことを趣旨、目的とすることをストレートに宣言しているのが、山口県の「長期継続契約を締結することができる契約を定める条例」です。県を見習って、山口県内の自治体も同様の定め方をしているところが多いようです。

 

山口県「長期継続契約を締結することができる契約を定める条例」

地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第百六十七条の十七の条例で定める契約は、次に掲げる契約とする。

一 物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約のうち、その契約の性質上一年を超える期間を定めて契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなものであって、次に掲げるもの

 イ 電子計算機若しくはその関連装置又は情報通信機器を借り入れる契約

   以下、ロ~ネ略

二 四月一日から役務の提供を受ける必要がある契約であって、当該契約の期間が二年度にわたらないもの

 

 この条例の第2号は、明らかに、4月1日から役務の提供を受けなければならないような契約は、前年度中に契約手続をするために、長期継続契約に指定しています。これこそ、長期継続契約の趣旨、目的を正しく理解し、活用しようとしている立派な条例です。

 長期継続契約であっても事業年度開始前の契約手続は不可だとか、長期(複数年)の契約でなければ該当しないなどという馬鹿げた運用をしている自治体の制度担当者は、山口県を見習っていただきたいものだと思います。

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地方自治法第234条の3(長期継続契約) 
普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない

自治令第167条の17  地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする

 

なぜ長期継続契約が困難か?

  条文だけサッと読むと、各自治体が条例でNHK受信契約を指定すればよさそうに見えます。しかし、法後段の「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。」が、ネックになってしまいます。

 

 電気、ガス、水道などなら、各年度の予算に合わせて使用することもできます。また、予算が0だったら、契約を解除することもできます。

 リースなどの長期継続契約の場合は、契約条項として、予算の減額等があった場合は契約を解除できる文言を入れ、法律の条件をクリアしています。これらは、総務省の指導・助言によるものです。

 しかし、NHK受信契約の場合は、予算に合わせて使用することもできず、契約書に予算減額の場合の解除条項を入れることなど、NHKが認めるとは考えられません。そもそも、テレビを保有している限り、契約して受信料を払うのが国民の義務だと主張しているわけですから。予算が減額されたら、テレビ自体を処分せざるを得ません。もったいない話です。

 この辺りについて、地方自治法とNHKの双方を所管している総務省としては、どう考えているのか、ぜひ、見解を伺いたいところではあります。

 

地方自治体における実務

 条例で指定していない以上、正規に長期継続契約として締結することはできません。しかし、テレビをもっていない自治体、NHKと受信契約を拒否している自治体というのも聞いたことがありません。

 どこの自治体も、無自覚に、自治法に違反して、年度を超える契約を結び、年度を超える前金払をしているのでしょう。

 

 参照NHK受信料1  地方自治法の扱いは?」

 年度を超える前金払が本当に違法かどうかについては、次を参照願います。

  「年度を超える前金払って、本当に違法?」

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 NHK受信料は、変な制度です。受信しようがしまいが、受信機を保有しているだけで受信料を払えという制度です。一般的な法秩序を無視している制度だと思います。そのせいもあり、地方自治法上の取扱いをどうすべきか、疑問な点がいくつかあります。

 

支出科目「節」は?

 民間企業では、おそらく通信費に計上しているところが多いと思いますが、地方自治体では「役務費」の節に計上しているところが多いと思います。しかし、これらはいずれも役務の提供を受ける対価としての支払を想定している費目であり、提供を受けるかどうかにかかわらず支払わなければならないようなものの支出には、不適当のような気もします。

 自治法施行規則で規定している節では、他に、負担金使用料及び賃借料委託料なども考えられますが、いずれも、同様の理由で不適当でしょう。

 最もぴったりくるのが、「公課費」です。テレビがあれば、NHKを受信するか否かにかかわらず払わなければならないとすれば、テレビにかかる公租公課と考えるべきではないでしょうか?NHKは、嫌がるかもしれませんが…。

 

長期継続契約には該当する?

 地方自治体の契約は、年度を超えてはいけないことが原則です。例外として、地方自治法第234条の3では、「電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約」は、年度を超えて契約できることになっています。

 この「政令」では、年度を超えて締結しなければ不都合な契約の種類について、各自治体が条例で指定することになっています。各自治体では、コンピュータや複写機などの機器の賃借(リース)契約や庁舎の管理委託契約などを条例で定めています。

 まず、「電気通信役務」にNHKの受信契約を含むかどうかですが、一般的な解釈では無理でしょう。CATVやWi-Fiは、電気通信役務でしょうが、放送は無理です。

 各自治体が、条例で制定するかどうかが次に問題になりますが、私の知る限り、条例でNHK受信契約を指定している団体はありません。また、総務省(旧自治省)が、各自治体に条例で指定するように助言している形跡も見当たりません

 実は、これを長期継続契約として扱いにくい理由があります。

 次稿「NHK受信料2  長期継続契約はダメ?」で説明します。

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