8月24日、福島原発の「処理水」の海洋放出が始まりました。案の定、中国などは強く反発し、日本の水産物の全面禁輸を決めました。それに対する日本政府の対応は、少しお粗末だと思います。
特にお粗末だと感じたのは、野村農水大臣が25日に閣議後記者会見で語った「大変驚いた。全く想定していなかった」という言葉です。中国がこのくらいのことをやりそうなことは、私ですら予想していましたが・・・。これは、おそらく、政府への批判を少しでも避けるため、中国が想定外の行動をしたことにしてしまいたかったのでしょう。本当に「想定していなかった」とすれば、お粗末すぎます。
中国の対応は非科学的なのか
中国が自国の原発からはるかに有害な汚染水を排出しているとすれば、中国の対応が非科学的であることはもちろんです。岸田首相などが、中国政府に対して強く抗議してみせることは当然です。
しかし、日本政府はそれらに関してまとまった情報を公表していません。私が特に知りたいのは、トリチウム以外の放射性物質が中国などの原発からどの程度排出されていて、それが福島原発からの処理水と比較してどうなのかというデータです。
福島の「処理水」からはトリチウム以外の放射性物質はほとんど除去されているといいますが、どの程度残存しているのか?それが中国などで正常運転中の原発からの排水と比較して多いのか少ないのか?そういった情報がなければ、中国政府の対応を非科学的と決めつけるわけにはいきません。
トリチウムの半減期は12年ほどであり、これが海洋中に蓄積されることなど心配する必要はないと思います。しかし、半減期が約5700年の炭素14や数億年、数十億年の他の放射性物質については、どんなに薄めたとしても海洋中に累積されます。これらについても心配無用というなら根拠を示して説明していただきたいのです。トリチウムにばかり焦点を絞った発表は、世論をミスリードしようとするものなのでしょうか?
仮に中国政府の主張に根拠がないとしても
仮に中国政府の主張が非科学的で根拠のないものだったとしても、日本が米国と歩調を合わせ、半導体分野などで中国外しに動いている以上、中国とすれば日本を叩く機会をうかがっていたでしょう。今回の海洋放出は、それに口実を与えてしまったわけです。
中国政府が今のように他国の技術を不法に盗むようなことをし、東シナ海や南シナ海で他国の領土を侵略しようとしている以上、日本は道徳的にも米国に協力すべきです。しかし、その場合、中国が今回のようなことをしてくるリスクを十分計算に入れ、備えなければなりません。
官民とも、中国と関わることの危険性を認識し、深入りを避けなければなりません。
政府や東電は、断片的な情報を小出しにするのではなく、国民が理解できるような形でまとまった情報を公表していただきたいものです。