広島県の湯崎知事が、421日、国が新型コロナ対策として全国民に一律給付する10万円について、県職員が受け取る分を寄付してもらい、県の新型コロナウイルス対策の財源にしたいという意向を表明しました。

財源が不足しているという現状は理解できますが、雇用主が従業員に寄付を割り当てるなど労働法の視点から問題があります。それに加え、地方財政法にも抵触すると思われ、いささか無理筋でしょう。ネット上は賛否が分かれているようですが、識者からは冷笑的な声が多かったようです。

この思い付きは、さすがに22日に早くも事実上撤回に追い込まれました。恐らく良識のある県幹部などが忠告したのでしょうが、県職員の懐を狙うことはあきらめていないようです。

 

地方財政法の規制

この法律は、地方公共団体の財政運営、国と地方公共団体や地方公共団体間の財政的な関わり方の基本事項等を定めています。

 その第4条の5では「割当的寄附金の禁止」を定め、その内容は、国は地方公共団体やその住民に対し、都道府県は市町村やその住民に対し、市町村は住民に対して、寄付を割り当てて強制的に徴収してはならないというものです。

 

地方財政法第4条の5(割当的寄附金等の禁止)

 国(国の地方行政機関及び裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二条に規定する下級裁判所を含む。)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない。

 

地方財政法の解釈

 戦後の財政難の時代、寄付金の名目に隠れて国や地方自治体による強制的な負担の転嫁が横行していた反省から、上の条文は、国や地方公共団体の行為をかなり広く規制する解釈が通説になっています。

 例えば、「間接であるとを問わず」とは、実行委員会や「〇〇財団」などを設けてそこを介して寄付を集めるような行為を指しています。

 「割り当てて強制的に徴収」は、一体的な観念と解され、「割り当てる」ということは、当然、強制の意味を含むものであるので、本条はこの「割り当てる」という行為自体を禁止し、あわせて「強制的な徴収(これに相当することを含む。)」を禁止しているという解釈です。つまり、割り当てをしても強制的に徴収さえしなければよいと解釈してはいけないということです。

 「強制的に徴収」とは、権力関係を利用して強圧的に寄附をさせるという意味であり、応じない場合に不利益をもたらすべきことを暗示する等社会的心理的に圧迫を加える場合も含むという解釈です。

 

広島県の事例

 広島県の今回のケースは、知事の言葉から、職員一人当たり10万円という目安、目標金額を割り当てたと解釈すべきでしょう。また、ほとんどの職員は、県の住民でしょう。

誰が寄付に応じ、誰が応じなかったか当局に把握されるでしょうから、職員に心理的圧迫が生じることは明白です。

地方財政法の通説的解釈からすれば、今回の広島県知事の思い付きは、違反です。

また、職員団体も、こんな無理筋を許しては存在意義を問われるので、大反対するはずで、実現は不可能だったでしょう。

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