昨年亡くなられた偉大な経営者、稲盛和夫氏の教えを実践していると自称しながら、社員に低賃金を強いるブラックな経営者がいることを憂いています。稲盛氏の「経営12カ条」はすばらしいものですが、氏の経営理念の根底が「会社は全従業員の物心両面の幸福を追求する」であることが、あの12カ条の文言からは伝わりにくいのが玉に瑕だと思います。
「経営12カ条」(稲盛和夫)を読んで 参照願います。
あの第1条「事業の目的、意義を明確にする ー 公明正大で大義名分のある高い目的を立てる」は、氏自身の言葉では、全従業員の物心両面の幸福を追求することが「どんな大義名分よりも立派な大義名分であり、どんなミッションよりも素晴らしく公明正大なミッション」であることが大前提です。しかし、この第1条の文言からは、必ずしもそれが読み取れません。
そのため、意図的なのか理解していないのかは分かりませんが、稲盛イズムを悪用する経営者もいて、ネットでもその手の話がいくつも見受けられます。
ある会社
私が仕事で関係しているある会社もその一つです。社長は稲盛氏の経営12カ条の信奉者であると自称し、盛和塾のメンバーで塾の役職にも就いていたことも自慢にしています。業務自体は公共的な仕事なので、入社してくる社員も地元国立大学の卒業生など、この地方の中小企業としてはかなりの人材をそろえています。社会貢献的なことを理念に謳っています。
しかし、社員の給与等の待遇は必ずしも良くありません。この物価急上昇の中、2023年のベースアップも微々たるものだったとのことです。
年度目標として「利益○億円」を掲げたとのことですが、私はこれは非常にまずいと思います。社長が「全従業員の物心両面の幸福」を第一義と考えていると社員が信じていない状況下で「利益○億円」を目指して頑張れと言われても、社員としては「社長の財産を増やすために頑張れと言われている」と感じてしまうでしょう。特にこの会社は同族会社なので、なおのことです。稲盛氏も著書の中で、この点は注意を要することを指摘しておられます。
社会貢献などを理念に掲げ、従業員に仕事のやりがいを感じさせながら劣悪な労働条件で働かせることを「やりがい搾取」というようです。この会社も、今は社員の多くが一応やりがいをもって一生懸命に働いておられますが、いつまで続くか分かりません。若い社員の中には、辞めていく人もいるようです。
稲盛イズムを標榜する経営者がいた場合、その会社の社員の給与水準等の勤務条件を調べ、本物かどうか見極める必要があるようです。黒字を計上しながら、物価上昇率以上の賃上げや物価手当の支給等をしなかった経営者は、まず偽物でしょう。
盛和塾に関係していた経営者の方々は、稲盛氏の名声を汚さないよう気を付けていただきたいと思います。
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