著者は、フランスの歴史・人口学者で、これまで数多くの著書でソ連崩壊、リーマンショック、トランプ大統領の勝利等を予言してきたことで有名です。彼の著書はこれまで何冊か読んでいますが、いずれも鋭く的確な分析に感銘を受けました。

 本書は、主に2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を論じています。本書と、数日前に読んだ佐藤優氏の本によって、私はこの戦争に関する考えがかなり変わりました。両氏の考えは、かなり近いようです。

 『「プーチンの野望」(佐藤優)を読んで』 参照願います。

 表紙のカバーには、「本来、簡単に避けられたウクライナ戦争の原因と責任はプーチンではなく米国とNATOにある。事実上、米露の軍事衝突が始まり、「世界大戦化」してしまった以上、戦争は容易には終わらず、露経済よりも西側経済の脆さが露呈してくるだろう。」という文言が記載されています。

 米国やNATOに責任があるというのは著者だけの考えでなく、元米空軍の軍人でシカゴ大学教授の国際政治学者、ミアシャイマー氏の主張が引用されています。ウクライナはNATOへの正式な加盟申請はまだでしたが、ロシアの侵攻のずっと前から米英はウクライナに大量の武器を与え、軍事顧問団も派遣し、ウクライナを「武装化」していたとのことです。また、ドイツ統一の時点でソ連に対してはNATOの不拡大を約束していたにもかかわらず、2008年のNATOの首脳会議で、ウクライナとジョージアを将来的にNATOに組み込むことを宣言しました。プーチンは、ウクライナとジョージアのNATO加盟は絶対に許さないと明確に警告していましたが、NATOはそれを無視し、ロシアとすれば、ウクライナ軍がさらに強化されてしまう前に叩かざるを得なかったのでしょう。

 私は、NATOがソ連にどんな約束をしていようと、ウクライナがNATO加盟を望めばやむを得ないのではないかとも思っていましたが、NATOがけしかけた要素も大きいようです。米国やEUは衰退基調にあり、ロシアはソ連崩壊後の混乱から奇跡的な回復を遂げています。ロシアが再び大国になってNATOと対峙することを米国やEUが恐れたということです。

 「アゾフ大隊」について、著者ではなく文春の編集部が次のように注書きしています。「2014年に白人至上主義極右思想の外国人義勇兵も含めた民兵組織として発足。現在はウクライナ内務省傘下にあるが、ナチスを彷彿とさせるエンブレム「ヴォルクスアンゲル」を部隊章として用いている。日本の公安調査庁も、「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」としていたが、現在、この記事はHPから削除されている。」

 

 西側やウクライナ側からの情報だけ見ていては分からないことをたくさん知ることができました。それでもなお、ロシア軍が他国に武力侵攻し、市民を虐殺していることは許せないことですが、単純にロシア、プーチンだけを悪と決めつけることはできないようです。

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