ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 行政実例 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:行政実例

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 「議会の委任による専決処分」(一般に「指定専決」ともいう。)という制度があります。地方自治法第180条に基づくもので、議会の権限に属する事項で軽易なものはあらかじめ議会が議決によって指定し、それについては首長が事前に議会に付議せずに専決処分できる制度です。

地方自治法

〔議会の委任による専決処分〕

180条 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。

 前項の規定により専決処分をしたときは、普通地方公共団体の長は、これを議会に報告しなければならない。

 

提案権の問題

 もともと議会が持つ権限を長に委任するものですから、長から提案することは筋違いであり、長には提案権がないというのが通説的な解釈であり、異論は見当たりません。私も同じ考えです。

 一方、条例の制定は、議員と長の両方に提案権がありますが、実際には長が提案することがほとんどです。その長が提案した条例で、本来は「指定専決」として議員提案で定めるべきことを定めてしまっている例がかなり見受けられます。もちろん、適当ではありません。

 よく見られるのは、議決を要する契約に係る契約金額の軽微な変更です。議会の議決を要するような大きな工事の契約は、途中で金額を変更せざるを得ないことが頻繁に生じます。その場合には、本来はあらためて議決を得なければなりませんが、条例で、例えば6分の1以内の金額の変更契約は議会にかけずに長が決めていい旨の定めをしている条例がかなり見受けられます。こういうことは、本来は「議会の委任による専決事項の指定」として定めるべきでしょう。

 

昭和301217日行政実例

 問 第180条の提案権は、長にもあると思うがどうか。

 答 長は、議長に対して事件を指定して議決を依頼することができる。

 

 原文はもっと丁寧なのかもしれませんが、現在、行政実例として流布しているのは、上のとおりです。間違いではありませんが、明らかに言葉足らずで、誤解を招きます。

 答は、長には提案権はないことを大前提に、「議長にお願いしてみるのはいいよ。」と回答しているのです。法律的、制度的な質問に対して、法律から離れた事実行為で回答しています。

 制度に詳しくない採用間もない職員の中には、「議決を依頼することができる。」を読んで、長には提案権があると誤解してしまう人もいます。間違いではありませんが、想定の斜め上を行くおもしろい行政実例です。回答者、又は行政実例をまとめた担当者は、ユーモアのある人だったのかもしれません。

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 「公共団体」と「公共的団体」、「公共的団体等」とは、日常会話では区別せずになんとなく使う場合が多いのですが、行政の世界や法令の中では、明確に区別されています。

 

地方自治法

238条の5 (4項以外省略)

 普通財産を貸し付けた場合において、その貸付期間中に国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。

157 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整を図るため、これを指揮監督することができる。

 前項の場合において必要があるときは、普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等をして事務の報告をさせ、書類及び帳簿を提出させ及び実地について事務を視察することができる。

3項以下省略)

住民基本台帳法11条の2第1項 (住民基本台帳の一部の写しの閲覧)

 (2公共的団体が行う地域住民の福祉の向上に寄与する活動のうち、公益性が高いと認められるものの実施 (他の部分省略)


 
 公共団体とは、国から一定の公共的目的のために設置され、権能を与えられた法人です。地方公共団体公共組合営造物法人(独立行政法人を含む。)の3種類があります。

 だから、上の自治法第238条の5のようにその他公共団体」といった場合、地方公共団体以外の2種類を指します。

 (1公共組合とは、土地改良区、土地区画整理組合、健康保険組合、公務員共済組合など、公共的な事業を担っていて一定の者の強制加入の仕組があったりします。

 (2営造物法人は、かつては、公社、公団、事業団などと説明されていました。現在は、従来のものはほとんど整理統合され、独立行政法人や、国の特別法に基づく特殊な法人の形をとることが多いようです。

 

 「公共団体」は、かなり限定的な、狭い概念です。

 

「公共的団体」とは

 公共団体にしろ公共的団体にしろ、地方自治法にも住民基本台帳法にも、きちんと定義している条文はありません。当然のこととして使われ、その定義は概ね確立してているようです。

 内容については、「行政実例」などで解説されています。総務省から出された平成18年9月15日の通知では、住民基本台帳法第11条の2の運用について、地方自治法の行政実例(昭和24年)を現代語訳しながら引用して、次のように説明しています。

「公共的団体」とは、公共的な活動を営む団体といい得るものであれば足り、法人であるか否かは問わない。なお、地方自治法第157条に規定する普通地方公共団体の長が指揮監督をすることができる「公共的団体等」については、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合、生活協同組合、商工会議所等の産業経済団体、社会福祉協議会、社会福祉団体、赤十字社等の厚生社会事業団体、教育団体、青年団、婦人会、文化団体、スポーツ団体等、いやしくも公共的な活動を行うものはすべてこれに含まれ、法人たると否とを問わないとされている(昭24.2.7行政実例等)。法第11条の2第1項第2号に規定する「公共的団体」についても、同様の団体が該当するもの』

 

 つまり、公共的団体とは、公共的な活動をしていれば法人かどうかを問わず、すべて該当するという極めて幅広い概念です。これだけ幅広いと、「等」を付けようが付けまいが同じことのようです。

 これらの説明には異議はありませんが、同じ総務省所管の法律なのだから、用語は統一していただけると混乱せずに済むのにと思いますよね。

 

 地方公共団体の条例等でも、財産を時価より安く譲渡できる相手方の範囲などで、厳密に使い分けているので、注意が必要です。

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「行政実例」とは

 地方自治体では行政を運営するに際し、法令、通達、通知等と並んで、「行政実例」を参照します。地方自治体が法令の適用などについて疑義がある場合、総務省(旧自治省、自治庁)に照会し、それに対する回答を他の自治体も参考にできるよう、公にしたものです。

 本来、単なる意見の表明に過ぎず、裁判になったケースで否定された例もありますが、多くの自治体がこれに依拠して事務を進めています。

 

「行政実例」の問題点

 自治体にとって大変便利なものではあるのですが、中には変なのもあり、自治体の事務処理を歪めているものもあります。そのときの国の職員の資質、熟練度によるものと思われます。

 「行政をゆがめる行政実例」参照

 

「行政実例」は今後どうなるか

 地方自治関係の行政実例は、明治時代に発出されたものまでありますが、昭和20年代、30年代に発せられたものが多く、昭和58年ころまで続いています。昭和60年代以降は、行政書士法の運用とかに関する行政実例は多少ありますが、地方自治に直接関わる地方自治法、地方公務員法などの関係の行政実例は見当たりません。

 総務省は、近年は、地方自治体が疑問点を照会し、文書での回答を求めても、応じていないようです。無理もありません。自治体が文書での回答を求めるような案件は、解釈が困難でしかも影響が大きいものが多いので、責任をもって回答などできないのでしょう。

 そんなこともあり、行政実例は、もう30年以上も加除されていない例規集のような状態です。

 また、平成124月に施行された地方分権一括法以降、国と地方の関係が従来と変わり、新たに昔のような「行政実例」など、発する立場かどうかも疑問で、またそんな雰囲気でもないでしょう。つまり、次第に古すぎて使えなくなり、廃れていくことになると思います

 ただし、今のところはまだ、行政実例に縛られている自治体が多い現状です。

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 巷では、加計学園問題で官邸が介入して行政をゆがめたことなどが議論されています。「行政実例」指導の「通知」の中には、大昔に発出されて未だに行政をゆがめ続けているものが存在します。

 

履行検査日で所属年度を決定?

 最初に、「工事請負費等は履行の確認のために行う検査の日によって所属年度が左右されるのが原則である。」(昭和38.1219通知)を見てみます。これは、自治法施行令第143条第1項第4号「工事請負費、物件購入費、運賃の類及び補助費の類で相手方の行為の官僚があった後支出するものは、当該行為の履行があった日の属する年度」という条文の解釈を示す通知です。

 この通知が弊害の多い困った通知であることは、以前、「331日の履行検査」の中で、指摘しました。

 

年度を超えて前金払してはダメ?

 後年度に属する経費を当該年度において前金払することはできない。たとえある経費を継続費としたとしても、当該年度の支出額に計上されていない限りできない。」(昭和29.62行政実例)

 この行政実例も、実態を無視した困ったものであることは、以前、「年度を超える前金払って、本当に違法?」の中で指摘しています。

 

 いつまでこのようなカビの生えた通知、行政実例に縛られ、虚偽の文書を作成し、窮屈な取扱いをしなければならないのでしょう?

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 地方公共団体の支払は、相手方の履行が終わったことを確認してから支払うのが原則です。この原則に対し、地方自治法第232条の5第2項、同施行令第163条で、一定の場合に前金払が認められています。

しかし、この前金払は、年度を超えて行うことができないことになっています。法令で明確に禁止されているわけでもなく、おそらく会計年度独立の原則や予算単年度主義を尊重した総務省(旧自治省)の指導によるものです。

 

この制約のもとになっているのが、次の「行政実例」です。

 

昭和2962日自丁行発第84号 行政課長回答

 問 自治令「前金で支払をしなければ契約しがたい請負、買入れ又は借入れに要する経費」には当該年度のみならず後年度に及ぶ部分の経費をも含むものと解してよいか。

 答 後年度に属する経費を当該年度において前金払することはできない。たとえある経費を継続費としたとしても、当該年度の支出額に計上されていない限りできない。

 

外国雑誌の購入

 筆者が20年ほど前、最初に「地方財務実務提要」(㈱ぎょうせい)の内容に疑問を覚えたきっかけは、「外国雑誌の購入と前金払」というQ&Aでした。そこでは、前述の行政実例などを引き合いに、「履行が後年度にわたるものは後年度分は前金払できないものと解さざるをえない」と結論付けています。

 筆者は、これを読んで腹が立つと同時に、あきれました。

 この人たちは、地方自治体は外国雑誌など購入する必要がないといっているのだろうか?

制度を所管する立場にありながら、対応策も示さず、ダメというだけは、無責任の極みではないか?

元々想定していたケースではないだろうし、本来の趣旨からは外れるかもしれないが、法令で明確に否定しておらず、そういう必要性があるのだから、認める以外にないではないか?

 

こういう場合、購入担当者としてひねり出す対策は、たいていろくなものではありません。

① なじみの業者に因果を含めて買ってもらう。(業者に前金を立て替えさせる。)

② 裏金から購入する。(現在、裏金を持っている役所は筆者の知る限りありませんが、20年前くらいまでは多くの役所が裏金を管理していたと思います。)

つまり、実態を無視したくだらない規制は、癒着や違法行為を生むということです

 

保険料の前金払

 年度を超える前金払を認めないという規制が、いかに馬鹿げたものかというもう一つの好例が、保険料です。

 自治体が行う保険契約は、イベント保険などを除き、ほとんどが1年以上の期間の保険です。しかも、保険料は前払いが原則です。

 41日から1年間の保険契約であっても、保険料は3月中に払わなければなりませんし、一般的には年度途中から翌年度にかけての契約です。つまり、どうしても年度を超えた前金払が発生するのです。

 つじつまを合わせるには、長期継続契約に指定するか、債務負担行為継続費を設定するかの手法も考えられますが、そんなことをしている真面目な自治体は、あまりありません。また、債務負担行為や継続費は、後年度の支払予定がなければ設定できません

 一部(多数?)の自治体は、これは前金払ではなく、「権利の購入」であり、1年間の安心という権利を確定的に購入するのだなどという屁理屈で対応しています。笑い話ですよね。前金払、あるいは前払いというのは、そういうことを言うのですから。

 

 実態を無視したくだらない規制は、癒着や違法行為を生むほか、笑い話も生み、人から笑われるということです。


 

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