ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> 費用収益対応の原則 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしていました。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:費用収益対応の原則

   サイト案内(目次)

 地方自治法の特別法でもある地方公営企業法が、会計年度区分についてどのように規定しているか見てみると、次のように規定しています。

(計理の方法)

第20条 地方公営企業においては、その経営成績を明らかにするため、すべての費用及び収益を、その発生の事実に基いて計上し、かつ、その発生した年度に正しく割り当てなければならない。

 

 「費用収益対応の原則」に従うことを明確に宣言しています。これは、発生主義を採る企業会計だから書ける規定です。企業会計では、経営成績を正しく反映させるため、費用収益対応の原則が大切にされています。例えば、翌年度の6月に支給する賞与が今年度の12月から来年度の5月までの勤務実績に基づいて支給されるとすれば、12月から3月分までの4か月の勤務に対応する部分は、今年度に支出がなくても今年度の経費として見越(みこし)計上します。また、今年度の7月に支出した火災保険料が今年度の8月から来年度の7月までの1年分の保険料だとすれば、今年度に全額支払っているでしょうが、来年度の4月から7月までの4か月分は翌年度の経費として繰り延べます。

 現金主義を原則とする普通会計では、このようなシステムはなく、費用収益対応の原則の厳格な適用は不可能です。

 この明確な原則があるため、地方公営企業会計法施行令の歳入の所属年度に関する規定は、自治法施行令に比べてシンプルです。

 

地方公営企業法施行令

(収益の年度所属区分)

第十条 地方公営企業の収益の年度所属は、左に掲げる区分による。

一 主たる収益及び附帯収益については、これを調査決定した日の属する年度。但し、これにより難い場合においては、その原因である事実の存した期間の属する年度

二 資産の貸付料その他これに類するもので前号に掲げるものに属しないものについては、貸付その他収益の発生の原因である事実の存した期間の属する年度

三 前二号以外の収益については、収益の発生の原因である事実の生じた日の属する年度。但し、これにより難い場合においては、その原因である事実を確認した日の属する年度

 

自治法施行令との比較

 公営企業法施行令第10条第1号では、「調査決定した日」と言っています。これは、いわゆる「調定日」を指すことは明らかです。自治法施行令にはこのような文言はなく、この規定ぶりの違いから解釈すれば、自治法施行令の方は調定の日で所属年度を判別するつもりがないことは明確です。

   サイト案内(目次)

 先日、ある方から次のような相談をいただきました。

 「電柱や電話ボックスを置く使用許可(更新)の申請が行われ、当市ではでは3月中に決裁をとり、3月中の許可日で、許可期間を41日から翌年331日までとしている。調定は、許可日の属する年度に行い、その年度の歳入にすべきと考えるが、どうか。」
 許可を4月1日以降にするというやり方は、不適切であることは当然です。4月1日の午前零時に許可書を交付できるはずがありませんから。

 

法令に明確な定めはない

 実は、歳入の調定に時期については、地方自治法、自治法施行令に、明確な定めがありません。

地方自治法

(歳入の収入の方法)

第231条 普通地方公共団体の歳入を収入するときは、政令の定めるところにより、これを調定し、納入義務者に対して納入の通知をしなければならない。

地方自治法施行令 

(歳入の調定及び納入の通知)

第154条 地方自治法第231の規定による歳入の調定は、当該歳入について、所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納入義務者等を誤つていないかどうかその他法令又は契約に違反する事実がないかどうかを調査してこれをしなければならない。

 普通地方公共団体の歳入を収入するときは、地方交付税、地方譲与税、補助金、地方債、滞納処分費その他その性質上納入の通知を必要としない歳入を除き、納入の通知をしなければならない。

 前項の規定による納入の通知は、所属年度、歳入科目、納入すべき金額、納期限、納入場所及び納入の請求の事由を記載した納入通知書でこれをしなければならない。ただし、その性質上納入通知書によりがたい歳入については、口頭、掲示その他の方法によつてこれをすることができる。

 

 いずれも、調定の時期については、何も指示していません。

 もう一つ考えあわせるべき条文は、自治法施行令第142条の歳入の会計年度所属区分に関する規定です。この第1項第2号で、随時の収入で、納入通知書を発するものは、当該通知書等を発した日の属する年度」としています。原因となる許可や契約の日の属する年度にしなければならないのなら、そのように規定するはずです。そのような厳格な規定になっていないということは、原因行為の日に必ず調定し、納入通知書等を発行することを義務付けていないのでしょう。

 

会計年度独立の原則からは

会計年度独立の原則は、各年度に支出すべき経費の財源は、その年度における収入によって調達すべきことをいいます。役所の会計は現金主義なので厳密な運用はできませんが、企業の会計では、費用収益対応の原則から、費用や収益を所属させる年度は、その原因の存在する年度に厳密に一致させます。例えば、6月のボーナスは、前年度の12月から当年度の5月までの勤務に対するものだとすれば、4か月分は前年度の経費にし、2か月分だけ当年度の経費にします。

その考え方からすれば、平成30年度に行政財産を使用させる許可による使用料は、平成30年度の歳入にするほうが望ましいと考えられます。そのためには、3月中に許可したものも、調定は4月に行い、新年度歳入にすべきと思います。

いずれにしても、自治法等に明確に定められていない問題であり、各自治体の判断で、やり方を決めていいことだと思います。

 

昔は・・・

 私も、新採用に近いころ、県の土木関係の出先機関で、道路占用料などの徴収を担当していました。年度末には、更新の許可を大量に行わなければなりません。許可だけは、何とか前年度末までに間に合わせたとしても、調定、納入通知書の送付までは、絶対に不可能でした。

 当時は、調定決議書も納入通知書も、何枚かの複写の用紙に手書きで記入し、納入通知書は封筒に手書きで宛先を書いて郵送していました。何とか5月中旬までには発送できるよう、頑張って残業したものです。6月にずれ込むと監査から指摘されるなどと言われていました。

 そんな状態ですから、許可の日と調定の日を同じ年度にすべきだという考えは、浮かぶはずもありません。

自治法、自治令のこの部分は、私が担当していたよりも更に昔のローテクの時代に制定されています。今のように、更新分の調定決議書や納入通知書などは台帳システムから自動的に打ち出される状態を想定してはいないと思います。

 

法令で調定の時期や年度区分が明確に定められていないことで、実務に疑義が生じている問題があります。これについては、別稿で改めて紹介いたします。

↑このページのトップヘ