ipt async src="//pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js"> NHK受信料 : 地方自治日記

地方自治日記

地方自治に誠実に取り組んできた県職員OBです。県の市町村課に長く在職したほか、出納局、人事委員会などのいわゆる総務畑が長く、自治制度等を専門分野としてきました。県を退職後も、時々、市町村職員などの研修で、自治制度、公務員制度、文書事務などの講義もしています。 単に前年どおりに仕事をすることが嫌いで、様々な改革・改善に取り組んできました。各自治体の公務員の皆様には、ぜひ法令を正しく合理的に解釈し、可能な限り効率的、効果的な行政運営をしていただきたいと願っています。

タグ:NHK受信料

 2022年10月11日、テレビを設置しているのに不正に受信料を支払わなかったときに、通常の2倍の割増金を徴収する制度の案をNHKが発表しました。2023年10月から受信料を10%程度値下げする一方で、こんな悪辣なことを企んでいたようです。

 NHKはこの制度を2023年4月から運用することを目標としています。

 2倍の割増金が適用されるのは、不正な手段で受信料の支払いを免れた場合と、正当な理由なしで受信機を設置してから期限までに受信契約の申し込みをしなかった場合の2つとのことです。テレビを設置してから、翌々月の末日までに受信契約の申し込みをしなかった場合には、これに該当してしまいます。

 

受信契約の強制は不公正だ!

 そもそもNHKを視聴する気もない人から受信料を徴収しようとするのは、不合理であり、正義に反します。これが、不可欠のインフラに対する負担金というなら、税金として徴収すべきでしょう。

 また、百歩譲って、地上波ならば、国民に最低限の情報を伝達するために必要なインフラだと言えるかもしれませんが、衛星契約は不可欠なインフラとは言えません。私は、大河ドラマや朝のニュースは楽しんでいるので、地上波分の受信料を支払うことは納得できるのですが、衛星放送などは民放も含め視ている時間などないので、支払いに納得できません。

 さらに、公平を期したいのならスクランブル放送にすればいいのに、それをせずに一律に徴収しようとするのは悪代官の手口です。

 こんな悪辣な計画が実現しないよう願っています。

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 NHK受信料について、
以前在職していた県庁も同様だったのですが、私が現在所属している小規模自治体でも、根拠なく年度をまたいで契約している実態でした。また、口座自動振替にすれば受信料が多少安くなるので、その2点が気になっていました。このたび(平成2912月)、長の御理解をいただき、適正化できたので、御報告させていただきます。

 

長期継続契約の対象に指定

 NHK受信契約は、4月から1年ごとの契約にしたとしても、その更新の合意は3月末までにされているはずであり、年度をまたがざるを得ません。しかし、自治法第234条の3でも自治令第167条の17でも、NHK受信料は対象とされておらず、自治体が条例で長期継続契約に指定するか、債務負担行為を設定しなければ、年度をまたいで契約できません。

 当自治体の「長期継続契約が締結できる契約を定める条例」では、施設等の維持管理や機器等の賃貸借に加え、「その他長が特に必要と認める契約」という包括的な号が設けられており、これに基づいて「日本放送協会との放送受信契約」を指定しました。

 私がかつて属していた県庁など、他の自治体では財務規則で追加できるような条例になっている場合が多いので、その場合は財務規則を改正すればいいわけです。
 なお、自治法に精通しておられる方は、長期継続契約は各年度の予算の範囲内で役務の提供を受けなければならないことを危惧されるかもしれません。しかし、このような運営費は、暫定予算でも認められるべきもので、所要の予算が議決されないというのはありえない事態だと思います。また、万一の場合は、テレビを除却(受信料のかからない状態に)する覚悟です。

                          

資金前渡の対象に指定

 多くの自治体では、電気、ガス、水道などの公共料金は、資金前渡として資金前渡職員の口座に振り込み、その口座から自動引き落としとしています。しかし、自治令第161条第1項の各号を見ても、NHK受信料は該当せず、他の公共料金と同じ扱いにしようとすれば、第17号に基づいて、自治体の規則(財務規則等)で指定しなければなりません。

 先日、財務規則の改正手続を終え、NHK受信料を資金前渡の対象に加えました。


この制度改正をした理由

 この規則等の整備によって安くなる受信料は、年間わずか550円です。しかし、一度やっておけばずっと有効であること、年度をまたぐ契約を適正化すべきことから、実施しました。もっと大胆に、公金口座から直接自動引き落としを容認している自治体があることも承知していますが、違法っぽいので、次善の手法にしました。(このことについては、いずれ別稿で)
 「地方自治体の口座自動振替の可否」参照

 地方自治法もNHKも総務省の所管です。長期継続契約にしろ資金前渡にしろ、法律、政令でNHK受信料を初めから対象にしなかったことは、立法ミスのような気がしますが、自治体でできる改善は、今後も続けたいと思います。

 

〈参照条文〉

地方自治法

(長期継続契約)

234条の3 普通地方公共団体は、第214条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。

地方自治法施行令

(資金前渡)

161 次に掲げる経費については、当該普通地方公共団体の職員をして現金支払をさせるため、その資金を当該職員に前渡することができる。

1~(8)、(10)~(12)、(15)(16) 略

(9) 官公署に対して支払う経費

(13) 電気、ガス又は水の供給を受ける契約に基づき支払をする経費

(14) 電気通信役務の提供を受ける契約に基づき支払をする経費

(17) 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上現金支払をさせなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの

(長期継続契約を締結することができる契約)

167条の17 地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする。



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 一般家庭では、電気料、電話料、NHK受信料などは、銀行口座からの自動引き落としが普通だと思います。しかし、国や地方公共団体は、事情が異なります。支出命令などの手続をせずに公金の口座から「自動的に」引き落とされることは、許されません

 そこで、資金前渡という制度が使われることがあります。

 

資金前渡とは

 資金前渡とは、特定の経費について指定した職員(資金前渡職員)に概算で交付し、その職員から現金で支払をさせ、後日領収書等で精算させることです。昔は、正職員や非常勤職員の給与なども、資金前渡職員の口座にいったん支払われ、給与担当者がその口座から現金をおろして給料袋に詰め、個々の職員に配っていました。

 現在は、電気料、光熱水費、電話料などは、所要額を公金口座から出金して資金前渡職員の口座に入れておき、そこから口座振替で支払うという地方公共団体が多いようです。うまく活用すれば、企業における小口現金のような便利な活用も可能です。

 資金前渡の手法で支払できる経費は、地方自治法施行令で定められています。

 

地方自治法施行令第161条第1(資金前渡)

次に掲げる経費については、当該普通地方公共団体の職員をして現金支払をさせるため、その資金を当該職員に前渡することができる。

1) 外国において支払をする経費

(2) 遠隔の地又は交通不便の地域において支払をする経費

(3) 船舶に属する経費

(4) 給与その他の給付    略

(13) 電気、ガス又は水の供給を受ける契約に基づき支払をする経費

(14) 電気通信役務の提供を受ける契約に基づき支払をする経費

(15) 前二号に掲げる経費のほか、二月以上の期間にわたり、物品を買い入れ若しくは借り入れ、役務の提供を受け、又は不動産を借り入れる契約で、単価又は一月当たりの対価の額が定められているもののうち普通地方公共団体の規則で定めるものに基づき支払をする経費

(16) 犯罪の捜査若しくは犯則の調査又は被収容者若しくは被疑者の護送に要する経費

(17) 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上現金支払をさせなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの

 

NHK受信料の問題点

 御覧の通り、NHK受信料は施行令では対象とされておらず、資金前渡するには、各団体の財務規則などで定める必要があります。しかし、そのような定めをしている団体はあまりありません。

 これは、おそらく、自治法施行令に規定するのを総務省が失念したと思うのですが、悪意に考えると別の可能性もあります。

 NHK受信料は、口座振替であれば料金が多少割引になります。NHKと地方自治法の両方を所管する総務省としては、地方公共団体に対して割引の適用をしたくなかった?

考えすぎだとは思うのですが・・・。

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地方自治法第234条の3(長期継続契約) 
普通地方公共団体は、第二百十四条の規定にかかわらず、翌年度以降にわたり、電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約を締結することができる。この場合においては、各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない

自治令第167条の17  地方自治法第234条の3に規定する政令で定める契約は、翌年度以降にわたり物品を借り入れ又は役務の提供を受ける契約で、その契約の性質上翌年度以降にわたり契約を締結しなければ当該契約に係る事務の取扱いに支障を及ぼすようなもののうち、条例で定めるものとする

 

なぜ長期継続契約が困難か?

  条文だけサッと読むと、各自治体が条例でNHK受信契約を指定すればよさそうに見えます。しかし、法後段の「各年度におけるこれらの経費の予算の範囲内においてその給付を受けなければならない。」が、ネックになってしまいます。

 

 電気、ガス、水道などなら、各年度の予算に合わせて使用することもできます。また、予算が0だったら、契約を解除することもできます。

 リースなどの長期継続契約の場合は、契約条項として、予算の減額等があった場合は契約を解除できる文言を入れ、法律の条件をクリアしています。これらは、総務省の指導・助言によるものです。

 しかし、NHK受信契約の場合は、予算に合わせて使用することもできず、契約書に予算減額の場合の解除条項を入れることなど、NHKが認めるとは考えられません。そもそも、テレビを保有している限り、契約して受信料を払うのが国民の義務だと主張しているわけですから。予算が減額されたら、テレビ自体を処分せざるを得ません。もったいない話です。

 この辺りについて、地方自治法とNHKの双方を所管している総務省としては、どう考えているのか、ぜひ、見解を伺いたいところではあります。

 

地方自治体における実務

 条例で指定していない以上、正規に長期継続契約として締結することはできません。しかし、テレビをもっていない自治体、NHKと受信契約を拒否している自治体というのも聞いたことがありません。

 どこの自治体も、無自覚に、自治法に違反して、年度を超える契約を結び、年度を超える前金払をしているのでしょう。

 

 参照NHK受信料1  地方自治法の扱いは?」

 年度を超える前金払が本当に違法かどうかについては、次を参照願います。

  「年度を超える前金払って、本当に違法?」

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 NHK受信料は、変な制度です。受信しようがしまいが、受信機を保有しているだけで受信料を払えという制度です。一般的な法秩序を無視している制度だと思います。そのせいもあり、地方自治法上の取扱いをどうすべきか、疑問な点がいくつかあります。

 

支出科目「節」は?

 民間企業では、おそらく通信費に計上しているところが多いと思いますが、地方自治体では「役務費」の節に計上しているところが多いと思います。しかし、これらはいずれも役務の提供を受ける対価としての支払を想定している費目であり、提供を受けるかどうかにかかわらず支払わなければならないようなものの支出には、不適当のような気もします。

 自治法施行規則で規定している節では、他に、負担金使用料及び賃借料委託料なども考えられますが、いずれも、同様の理由で不適当でしょう。

 最もぴったりくるのが、「公課費」です。テレビがあれば、NHKを受信するか否かにかかわらず払わなければならないとすれば、テレビにかかる公租公課と考えるべきではないでしょうか?NHKは、嫌がるかもしれませんが…。

 

長期継続契約には該当する?

 地方自治体の契約は、年度を超えてはいけないことが原則です。例外として、地方自治法第234条の3では、「電気、ガス若しくは水の供給若しくは電気通信役務の提供を受ける契約又は不動産を借りる契約その他政令で定める契約」は、年度を超えて契約できることになっています。

 この「政令」では、年度を超えて締結しなければ不都合な契約の種類について、各自治体が条例で指定することになっています。各自治体では、コンピュータや複写機などの機器の賃借(リース)契約や庁舎の管理委託契約などを条例で定めています。

 まず、「電気通信役務」にNHKの受信契約を含むかどうかですが、一般的な解釈では無理でしょう。CATVやWi-Fiは、電気通信役務でしょうが、放送は無理です。

 各自治体が、条例で制定するかどうかが次に問題になりますが、私の知る限り、条例でNHK受信契約を指定している団体はありません。また、総務省(旧自治省)が、各自治体に条例で指定するように助言している形跡も見当たりません

 実は、これを長期継続契約として扱いにくい理由があります。

 次稿「NHK受信料2  長期継続契約はダメ?」で説明します。

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