原書では、題名がWOKE CAPITALISM」、副題が「How Corporate Morality is Sabotaging Democracy」のようです。これを「意識高い系・・・」と訳した日本語訳の巧みさに、まず感心しました。

 表紙カバーの折り返し部分に、重要な基礎知識の解説があります。

 『WOKE」とは、「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生した言葉。公民権運動時代から使われていた言葉だが、近年は「社会正義」を実現しようとする人々の合言葉となっている。』

 『WOKE CAPITALISM」とは、企業が気候変動対策、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等実現などに取り組む様子。』

 米国では、しばらく前から、大富豪や巨大企業が莫大な資金を環境対策事業等に寄付しています。本書で例示されているAmazonの創業者ジェフ・ベゾス氏は、気候変動対策のために2022年に100億ドルもの寄付をしました。しかしその一方、タックスヘイブンを使うなどの巧妙な租税回避策により、Amazonはほとんど法人税を納めていないようです。また、同社の倉庫では、労働者が劣悪な労働条件に苦しんでいます。

 こういった事例は、米国では無数にあり、日本にもあります。

 本書では、多数の事例を分析し、彼らの「善意」は大衆に良いイメージを持たせ、利益に結び付けることを狙っていると結論付けています。

 あまりに貧富の格差が拡大し、これを放置すると暴発の危険があるため、彼らからすればはした金を福祉事業に恵む、企業のイメージを良くして売上をさらに増やすため人種差別に抗議する姿勢を示す・・・。これらは結局、格差を生み出す今の社会の仕組みを自分たちに有利なままに温存し、今後も利益を貪るためというわけです。

 

 Wokeという言葉は、元々はいい意味の言葉でしたが、今では、経済的利益の追求にのために意識の高い道徳的なスローガンを利用しようとする企業等を揶揄するときに使われる言葉でもあるようです。

 著者は、人々に、大企業等のWOKEな行動に騙されず、目覚め(woke)なければならないと主張されています。一方、企業等の動機は株主利益の最大化を目指すものであることを認識しつつ、あまりに無力な政府に代わって企業の力を利用すべきだとする立場もあります。

 社会問題の是正に企業や大富豪の力を利用しつつ、政府は格差を是正する施策に容赦なく取り組むのが賢いやり方でしょうが、言うは易く行うは・・・。

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